BROTHERLY LOVE  KUNIO 10th album

slideaway

2018年11月22日発売


'BROTHERLY LOVE'!!
“これまでの音楽活動を通して、得た人とのつながり”をテーマにしたアルバム。レコーディング後亡くなった故スコット・ボイヤー氏の遺作でもあります(彼の名曲Please be with meなど3曲挿入)。ビンテージ・1958年製エクスプローラ&1959年製レスポール等が登場します。


KUNIO KISHIDA "BROTHERLY LOVE"

CH-10100509 CaneHedge Records Alabama 日本盤 ViVID SOUND

11月22日発売。全13曲。2,500円(税別) 日本盤。増渕英紀氏によるライナーノーツ有。

13 2,500 (税別) 。日本盤。増渕英紀氏によるライナーノーツ有。

レイド・バックしたサザン・ロックを「魂」で感じるアルバム!“これまでの音楽活動を通して、得た人とのつながり”をテーマにしたアルバムでもある。

レコーディング後亡くなった故スコット・ボイヤー氏の遺作でもあります(彼の名曲Please be with meなど3曲挿入)。

チャック・リヴェール、ポールホーンズビー他、サザンロックの友人が多数参加。

日本からは、GLAYのタクロウ氏が1曲スペシャルゲスト参加!!元EC所有 '58 EX, '59 LPstd, etc..ヴィンテージ・ギター・サウンド!

 

MUSICIANS

KUNIO KISHIDA, SCOTT BOYER, CHUCK LEAVELL, PAUL HORNSBY, EDDIE STONE,

BILL STEWART, LAMAR WILLIAMS, JERRY WASLEY JR., KELVIN HOLLY, DAVID HOOD,

NOBLE C THURMAN, MIKE DILLON, ASAKO USHIJIMA,

VERY SPECIAL GUEST: TAKURO / GLAY, e.t.c

プロデュース:KUNIO KISHIDA

 

※増渕英紀によるライナー・ノーツ!


●クニオ・キシダ ブラザーリー・ラヴ・ライナー

  早いもので前作『スライド・エンジェル』がリリースされてから、もう3年が経ってしまったことになる。というわけでクニオ・キシダの3年ぶりとなる新作『ブラザーリー・ラヴ』が届けられた。毎回のことではあるが、レコーディングはメンバーがメンバーだけに、そのスケジュール調整に四苦八苦しているが、今回もまた相当に大変だったようだ。

  このところ毎年9月にメイコンのThe Big House (Allman Brothers Band Museum) The Douglass Theatreで開催されるビッグ・イヴェント『GABBA Fest (The Georgia Allman Brothers Band Association) 』に招かれているが、その際に機会を逃さずにレコーディングしてくるというのが定石。が、昨年のメイコン行きの時は、9月18日にまさかの悲しみに見舞われる。こともあろうに、当時体調が思わしくなかったクニオ・キシダの最大の理解者であり、プロデューサーでもあったジョニー・サンドリンが急逝してしまう。クニオ・キシダとは、マッスル・ショールズ・レコーディングによるソロ・デビュー作『南水~Swamp Waters(2002)からの付き合いだから、欠かせない相方、大切な友人でもあった人だ。ジョニー・サンドリンと言えば、古くはオールマン・ブラザーズ・バンドの前身ともいうべきアワ・グラスのドラマーで、オールマン・ブラザーズ・バンドのプロデューサーでもあった。そして一時は現役を退いてプロデューサー業に徹していたが、76年には元カウボーイのトミー・タルトン、ビル・ステュアートと組んだT.S.S.でベーシストとして現役に復帰、アルバム『Happy to be Alive』をリリースもしている。

 そんなこともあり、帰国後やはり長年レコーディングに参加してくれている元カウボーイのスコット・ボイヤーと連絡を取り合って、二人でデュオ・アルバムを作ろうと計画を練っていたという。内容としてはスコットが作詞、クニオ・キシダが作曲してオリジナル・アルバムを作るというもので、その中にはスコットが作った名曲でクラプトンが『461 Ocean Boulevard』でカヴァーしている「Please Be With Me」の新録のアイデアもあったそうな。それは11月に実現したものの、スコットの体調が悪くてメイコンではなくて彼の居る地元、アラバマのシェフィールドでのレコーディングとなった。このアラバマでのテイクは3曲、バックはスコットのバンドで、ドニー・フリッツと共に2009年に来日しているザ・デコイズがサポートしている。

 まだある。前作でクニオ・キシダと一緒に、それこそデュオのようにしてレコーディングに参加していたチャック・リヴェールが、運悪くストーンズのスケジュールとバッティングしてしまい、またまたレコーディングはズレ込む羽目に...。結局、チャックのレコーディングが終わったのが2月。が、そこにまた招かれざる悲報が舞い込んで来る。肝臓を病んで体調を崩していたスコットが急逝してしまったのだ。これには本当に打ちひしがれた、とクニオ・キシダは述懐する。ましてや二人でデュオ・アルバムを作ろうとしていた矢先の出来事だったので、尚更だろう。その悲しみとショックたるや、ちょっと想像に尽くし難いものがある。つまり、本作に収録されているスコットの作品、ヴォーカルが最後のレコーディング、遺作となっている。

 残りのテイクは基本メイコン・レコーディングとなっているが、今回もまた“クニオ・キシダのコネクション”とも言うべき豪華なレコーディング・メンバーとなっている。

 全曲に参加しているチャック・リヴェールはオールマン・ブラザーズ・バンドのピアニストとしてあまりにも有名だが、オールマン、シー・レヴェルを経て現在はストーンズのキーボーディストとして活躍している。

 オルガンのポール・ホーンズビィは、故ジョニー・サンドリンと共にキャプリコーン・レコードの双璧をなすプロデューサーとして大活躍し、マーシャル・タッカー・バンド、ウエット・ウィリー、ボビー・ウィットロックらを手掛けたことで知られる。ジョニーと同じく元アワ・グラスのメンバーでもあった。

 ドラムスのビル・ステュアートはカウボーイ、T.S.S.、更にはグレッグ・オールマン・バンドでの活躍で知られる。

 ベースの他に大半の曲でヴォーカル・ハーモニーを付けているジェリー・ワスレイ・ジュニアは、デビュー以来ずっとクニオ・キシダの片腕となって活躍して来ただけでなく、事あるごとに来日。今やクニオ・キシダのライヴにも欠かせない存在になっている。

 エディ・ストーンはサザン・ロック・シーンに81年デビューと、少々遅れて登場したメイコン出身のバンド、ドク・ホリデイのキーボーディストとして活躍して来た人で、バンド自体は2011年に解散している。

 そして今回のサプライズとも言えるのが、8曲目の「What Should I Do」でヴォーカルを取っているラマー・ウィリアムス。クニオ・キシダならではの印象的なリフをバックに雰囲気のある歌を聴かせてくれる。クレジットだけ見るとオールマンのベーシストのラマー・ウィリアムスか?などと思ってしまうが、本人はすでに故人で実はその愛息、正確にはラマー・ウィリアムスJr.ということになるんだろう。ちなみに彼は現在南部でヴォーカリストとして知られた存在で人気者だそうな。

 

●『Brotherly Love

 本作はクニオ・キシダ自身が語るところに依れば、当初は彼を常に温かく受け入れてくれるメイコンの街をテーマにしようと思っていたものの、色々なことが重なったことから、“これまでの音楽活動を通して得た、人とのつながり” をテーマにしたアルバムにしようと思ったという。例えば、クニオ・キシダにマッスル・ショールズ・レコーディングの話を持ちかけてくれたのはジェリー・ワスレイであり、そこから全てが始まったのだろうし、故ジョニー・サンドリンや故スコット・ボイヤーのことも恐らくは念頭にあったに違いない。元々はデュアン・オールマンへのトリビュートの想いから始まったレコーディング&ライヴ活動だった筈だが、いつの間にか彼を支えてサポートしてくれた人々、そして惜しくも亡くなっていった親しい故人たちへの想い、そんな様々なトリビュートの気持ちが本作には深く込められ、凝縮されているように感じられる。そう思うと『Brotherly Love』と名付けられたアルバム・タイトルの意味深さも良く判る。

 

 そんな思いが如実に伝わって来るのがオープニングを飾る「If You Leave Me」だろう。イントロに流れる、思いっ切り音を引っ張ってまるですすり泣いているようなギターが雄弁に物語り、“If You Leave Me, Give Me A Reason. Why Don't You Say Goodbye. If You Go Away, I Could Not Understand.”なんて詞がまた泣かせる。愛する人との別れを歌ったものだが、別に相手が女性だとは限らない。どうとでも解釈出来るように巧みに書かれているが、先に触れた二人との別れかも知れないし、或いはグレッグ・オールマンだったり、バンドのキーボード奏者だった小山英樹かも知れない。そんな風に思いながら聴くと、また違った表情も見えて来て一層味わい深い気がする。バックでスタックス・サウンド風のバッキングが聴けるのも面白いが、何と言っても得意のリズム・リフがこの上なくキャッチーだ。元々、デビュー当初から「Witch Face」とか「I Got Sick?」などの例を挙げるまでもなくリズムを刻み、アクセントを付けながらリフを奏でるというのは、彼の得意技だったように思うが、「WET」を彷彿とさせる今回のリズム・リフもまたキラーな出来栄えだと思う。

 

 チャックのニューオリンズっぽいローリング・ピアノが聴ける「Almost Lose My Mind」、「Highway 75」に続いては、ほのぼのムードが漂う「Macon Flag」へと繋がる。オールマン風のギター・サウンドに乗って“Always Peaceful”とか“So Many Good People”なんて歌詞が聴こえて来て、何やら心温かな気分にさせられる。言うまでもなくメイコン賛歌なのだが、今年もまたメイコン滞在中の写真を見ると、“Kunio Kishida”と彼が大歓迎されている様子がダイレクトに伝わって来る。『GABBA Fest』のライヴの写真も勿論だが、地元の人たちがアップしている写真や、添えられたコメント、或いはクニオ・キシダと一緒に撮った写真などを眺めていると、彼が如何にメイコンの人たちに歓迎され、愛され、尊敬されているかが良く判る。気持ちが良い作品であると同時に、メイコンの人たちへの最高のプレゼントでもあると思う。

 

 続く「Dear Old Brothers」は、先に触れたジョニー・サンドリン、スコット・ボイヤー、二人のことを想いながら作られた作品なのだろう。情感たっぷりに表現されたスライドは、音色も含めてどこか物哀しいものに感じる。この曲では最近知り合い仲良くなったという GLAY TAKURO がスライド以外のギター・パートを弾いているが、何やらスライドに絡むスキャットのようにも聴こえるのが面白い。

 

 スコット・ボイヤーが作詞し、クニオ・キシダが作曲したという最後の共作になってしまった「In The Dark」は、スコットのヴォーカルが何よりも味わい深く感じられ、そのヴォーカルを盛り立てるようなスライドの音色は何とも言えないものがある。楽曲がまたすこぶる良い出来栄えで、スコットが存命していたら、この調子でドンドン良い作品が生まれたであろうことを考えると、本当に残念で悔やまれる。

 

 トリビュートという意味で面白いのは「John Said」だろうか。一聴してすぐそれと判るこれはジョン・レノンへのオマージュ・ソング。“Ticket To Ride”、“I Feel Fine”、“Rovolutin”などの曲名や“Nothing Is Real”などの歌詞も歌い込まれていて、遊び心満点だが、こういうことが出来るというのも新生面として興味深いところでもある。

 

 そして最後に触れておきたいのがバンド・ヴァージョンとアコースティック・ヴァージョンの2曲が収められているスコット・ボイヤー作の名曲「Please Be With Me」。先に紹介した「In The Dark」もそうだが、これはスコット・ボイヤーの死後、クニオ・キシダが後からギター・パートを入れたもので、スコットの歌を聴きながら弾いていて泣いちゃったそうだ。カウボーイのオリジナル・ヴァージョンはここに収録されているものよりもテンポが早いが、元々バラードの名手と言われたスコットだけに、このスロー・ヴァージョンの方がしっとりジワッと心に沁みて来るものがある。スローにしようと思ったきっかけは Scott Boyer And The Decoys 名義でリリースされたアルバム『All My Friends (1991) に収録されていた「Please Be With Me」を聴いたからだと語るが、聴いて見て納得のテンポだ。奇しくもそのレコーディングにはチャックも参加しているというのも、何か因縁めいてもいる。そしてアコースティック・ヴァージョンの方はカウボーイのオリジナル・ヴァージョンでデュアンが弾いていたように、シンプルなスタイルで、ここでデュアンへの想いとスコットへの想いが複雑に交錯するように聴かせるドブロがまた心憎いほど泣かせる。

 

 

           201811

 

                  Stay High Always!

 

               (HIDEKI MASUBUCHI/増渕英紀)

 

 


nancy-g@nancy-g.com  Kunio Kishida

https://www.youtube.com/watch?v=fgi4sN3-G2U
https://www.youtube.com/watch?v=HkbyifvdGXQ&feature=youtu.be


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